FURU2005-09-27

♪Eva Cassidy『Live At Blues Alley』


96年11月に、33歳という若さでこの世を去った女性シンガー、エヴァ・キャシディー。彼女の存在を私が知ったのは、その死からもう何年も経ってからのことです。このライヴ盤は、96年の2月録音ということで、すでに腫瘍に蝕まれた体に鞭打っての音楽活動だったことでしょう。(・・・リアルタイムで彼女の音楽に接することができなかった私がこのシンガーを紹介するといつもこんな暗いプロフィールになってしまうなぁ。いけませんね。)


このライヴ盤は素晴らしすぎる内容を持っているズバリ必聴盤です。私の知る限りでは、この盤を聞いた人で、これを悪く言う人なんて一人もいないですね。まず何と言っても選曲が良い。ジャズ名曲「Cheek To Cheek」に始まり、次が名ブルーズ「Stormy Monday」、続いてS&Gの「明日に架ける橋」といった具合に、使い古された表現を敢えて使いますけど、要するにジャンルを越えたアーチストなわけです。聞き進めていくと、彼女の守備範囲はさらに広がっていき、インプレッションズやアル・グリーンのソウル・ナンバーから、スティングの曲まで登場してきます。様々な名曲を惜しげもなく繰り出していくその姿勢にまず共感するのと、そのすべてが何の違和感もなく、彼女のカラーに塗り変えられているのが素晴らしいんですよね。肩に力の入っていないバックの演奏の雰囲気もいい。その中で、彼女の飾らない歌いっぷりが各楽曲の良さをストレートに伝えてくれます。


私がベストトラックに挙げる「Blue Skies」は、そんな彼女の魅力が本当によく出た一曲。特に♪I never saw the sun shining so bright〜のくだりは、何度聞いても込み上げてくるものがあります。他にも「子供の頃によく聞いた曲です・・・」なんていう自身のMCに導かれる「Tall Trees In Georgia」も沁みるし、「枯葉」やルイ・アームストロング「この素晴らしき世界」といった、ともすれば普段は忘れがちな有名曲の素晴らしさをハッと再認識させてくれたり・・・。歌、演奏、そして選曲。そのすべてにおいて、私にとって“素晴らしいライヴ”の要素がこれでもかと詰まっているんですよね。